2017年8月29日火曜日

軸を鍛えると歳をとらない

現在当会ではほぼ毎日稽古を行っている。
これまで270人以上の方が当会の稽古に参加されたが、
その中で特に興味深く感じたことをひとつ。

これまで様々な職種や趣味をされている方が参加された。
中でも他流の武術家や格闘家、それにダンサー。

元々、体を動かすことに興味のある方達だから、太極拳に取り組む姿勢もとても熱心。
無論、これまであまり体を動かしたことのない方も一生懸命稽古に取り組んでおられる。

私が不思議に思ったのは、ダンサーであればずば抜けた平衡感覚を持っていると思っていた。
ところが太極拳を始めてみると、皆さんなかなか思うようにバランスがとれず苦労されている。
何故だろう?

これまで私が接してきたダンサーはジャズダンス、バレエ、ヒップホップ、ブレイクダンス、フラダンス、フィットネスダンス、創作ダンスなどなど。

特にバレエは片足で立つことが多いわけで並大抵の平衡感覚ではないと思う。
しかし太極拳では何故かうまくバランスがとれない。

これを独楽に例えてみよう。
回転の速い独楽は安定して長時間回ることができる。
まったくぶれない。
しかし、回転の勢いがなくなってきた独楽はぐらぐらと揺れだし間もなく倒れる。

自転車や単車も同じ。
走っていると自然と直立し、速度が遅くなるとバランスをとるのが難しくなり、足で支えなければ倒れてしまう。

いわゆるこれら、遠心力や推進力がバランスを助けているということ。

しかし太極拳では、回さない独楽を立てようとするようなもの。
走っていない自転車を立てようとするようなもの。
圧倒的に難しいのだ。

逆を言えば、だからこそ他のスポーツやダンスでは得ることができない軸を鍛えることができる。

この軸を鍛えると力を使わなくとも力を出せるようになる。
仕事や生活での作業が圧倒的に楽になる。
老化と共に頻繁に起きる転倒も起きにくくなる。
なぜ転倒してしまうかは筋力の衰えと共に体を支える力が弱まってしまうからだ。

太極拳で鍛える筋肉はまさにその軸を支えるコアマッスル。
しかもそのコアマッスルを最小限にしか使用しない。
太極拳で立つ原理は筋力だけではないからだ。

立つ時は、地球に働いている遠心力と引力を意識して立つ。
いわば天と地と繋がっているとイメージする。
意識するとその恩恵を得ることができる。

木や植物には筋肉がない。
しかし、まっすぐ立っている。

木や植物には根があるからだが、人間も大地に根を張ることができる。
イメージ力を使うわけだ。

脚を上げようとするとバランスがとれなくなり体が揺れ、そして倒れてしまう。
これに関しても脚を上げようとするからいけない。

太極拳は武術であり踊りではない。
脚を上げるのではなく蹴り技であることを思い出して欲しい。

上げると蹴るでは全く違う。
しかも太極拳の場合の蹴りは、力で蹴るのではない。
脚の筋肉をゆるめ、体全身を十分にゆるめ、そして、意を用いて脚を蹴り出す。

上げるのではなく広がるという感じだろうか。

いずれも太極拳で鍛えられるのは体を支えるためのコアになる筋肉と、
そして意を用いて勁力を使うようになれるということ。

どのようなジャンルの達人でも、その神技ともいえるような動きに力を使っているようには見えない。
力を使うのではなく力を使わない方法を知っているのだ。

筋力には限界があり、勁力には限界がない。
神技と言えるような領域に至るには、筋力に頼っていてはいけないということになる。

鍛えるのは筋力ではなく、イメージ力である。