2017年8月22日火曜日

立つ練る歩く

太極拳を始めとする「氣」を用いる拳法を内家拳と呼ぶ。

内家拳は体格差のギャップを埋めてくれる素晴らしい拳法。

体が小さいから。
体力がないから。
弱虫だから。

全く関係ない。

私は太極拳によって心身共に丈夫になり病気もほとんどしなくなったが
中学生までの私は先程の3つ全部が当てはまった。

体はクラスで一番小さく、背の順も一番前だった。
だから背の順が嫌いだった。

体力もなかった。
幼いころから小児喘息を患い、疲れやすく激しい運動をすると動悸が激しくなり、
喘息が発症すれば息が出来なくなり、
酷い発作があまりにも辛く、そんな自分が哀れて泣いたこともよくあった。

弱虫でもあった。
喧嘩を売られればやり返すのだが、やっぱり怖い。
大人しく体が小さいというだけで、どの学年でも私をからかう者がいた。
殴る、蹴る、唾を吐かれる・・
そんなことがしょっちゅうだった。
だから暴力が大嫌いだった。

ある時、本屋でみつけた合気道の本のサブタイトルが「雲突く大男をひとひねり」
と書かれているのを見て、勇気をもらった。
その本を買い、自分なりに独習してみたが、うまくいかなかった。
でも、それでも良かった。
体が小さくとも大男に勝てる技があるのだということを知っただけでも勇気をもらえた。

それから約24年。
太極拳と出会った。
その時の今は亡き先輩の言葉は今でも忘れない。
「太極拳は50から力を出せるようになる」

今までの常識で考えるなら歳をとればとる程体力がなくなり、弱っていくはずなのに
50歳から強くなる太極拳とは一体?!
すごく興味を持ったことを覚えている。

また、ある先生は
「太極拳は歳をとればとるほど強くなり、棺桶に入る直前まで強い」と仰った。

そうか。
歳をとることを嘆かなくともいいんだ。
寧ろ歳をとることが楽しみになるとさえ感じた。

この言葉は今でも私の中に生き続け、そして今も自分の可能性をどこまで引き出せるか修行を楽しんでいる。

そのための鍛錬が、立つ練る歩くだ。

体格や体力のギャップを埋めるにはまず立つことが大事。
これを站椿功、或いは立禅という。

そして練る。
極限まで脱力しながら套路をゆっくり行う。
この方法でしか得られない力を身につけることができる。

次に歩く。
天地のパワーを感じながら円軌道を歩いてると、
どんどん自分の中にパワーが渦巻いてくる。

内家拳は本当に奥が深くおもしろい。
何をやっても飽きっぽい私だったが、これならば死ぬまで飽きることがない。

太極拳には引退という言葉はない。
やればやるほど強くなり、それが死ぬまで続く。

当時、体が小さく、病弱で弱虫だった自分が大嫌いだった。
しかし今はそれで良かったと。
こんな素晴らしい武術に出会えたのだから。