2016年2月18日木曜日

私の師匠

私に始めて太極拳を教えてくださった師匠は、
とても素晴らしい人格をお持ちの方。

最初の頃は毎週続けて稽古に通ったが途中から仕事の都合で稽古を休むことが増え、
そんな私のことをいつもいつも気にかけてくださった。

稽古中に叱られたことは一度もない。
口数も決して多くない方だが、太極拳の素晴らしさを身を以て教えてくださった。
稽古中の師匠は恐くて近づきがたい方だが、稽古が終わるととても気さくで優しい。

ある先輩が仰った。
「先生は優しい方だけどそれに甘えちゃいけないよ」と。
確かにそうだと思った。

師匠は、武道家として強いし、推手では簡単に崩され、組手では何度飛ばされたかわからない。
だが、それを鼻にかけたり、威張ったりされることは一切ない。

私はそんな師匠が心底カッコいいと思ったし、憧れた。

本当に強い人間はそれを誇張したりしない。
それが真の武道家であり武術家だと思うから。

同じ武術の世界でも自分の権威を振りかざし威張ったり、
自分より経験の浅い者や実力の低い者を見下したり、
またそれを誇張したりされる武術家もおられるが、私には興味がないし、哀れだとさえ思う。
真の武道家、武術家ならそれ相応の人格が備わっているものだと私は思う。

先日、私はサークルの会員さんに自分のことを「先生らしくないでしょ?」と言ってみた。
会員さん達はびっくりしたような表情をされていたが、
実は3年近く教えてきていながら未だ先生としての自覚があまりない。

なぜなんだろうと考えてみた。
それは私は確かに教えてはいるが、私自身も生徒と同じようにまだまだ修行に励みたいと思っているからだと思う。

武術の世界に終わりはない。
死ぬまで修行あるのみ。
いわゆる死ぬまで威張ることはあり得ない。